創業者のDNAを失った大手企業 (2003.8)

弊社が支援しているベンチャー企業へ、ある大手企業から製品開発の打診があった。そのベンチャー企業が特許取得済みの革新的技術を新製品に活かせると考えたようである。

その後数回にわたる話し合いから試作品開発まで進みかけた時に、その大手企業からベンチャー企業に対し財務諸表開示の要求があった。その後大手企業から、財務諸表審査の結果そのベンチャー企業とは取引関係を開始できないという結論が知らされた。

この大手企業を数十年前にベンチャーとして立ち上げ、世界的企業へと導いた創業者は、自分が興味を引く技術を持つ会社との取引を検討する際に、相手の財務諸表を見て判断することはなかったのではと思える。

もはや世界的企業となった今、創業当時のやり方だけで全てが上手く機能するとは思えないので、この企業が今回のような判断を下すのは仕方のないことなのかもしれない。しかし私は、創業者の持っていた良きDNAをこの世界的企業が失いつつあることを残念に思った。